保険商品には、大きな差がない。
つけられるオプションの制限や、手続きの簡単さは会社によって違う。
だが、商品そのものには大差をつけたくてもつけられない。
保険商品は金融庁の規制が厳しいため、「A社なら入院・通院・手術を全額保証で月5,000円、B社は同じ金額で入院保障だけ」「A社の保険なら年利10%で満期解約時に戻ってくるが、B社は1%」などという差をつけられないからだ。
ある保険会社の社員はこう語る。
結局、保険商品は営業しだいです。
販売員が信頼できる方なら、その方を選んでいただくのが一番。
逆に商品がよく見えても担当者が気に入らないなら、変えてもらったほうがいいくらいです。
家賃の次に大きな投資になるとも言われる生命保険ともなれば、それくらいのワガママを言うのは当たり前です。
私だって、自分がプライベートで契約する保険の担当者は厳選していますよ。
では、どんな営業を選ぶのが最適なのだろうか?
ものは試し、筆者は1か月の短期間に5社以上の営業を受けてみた。
そのうえで、オススメしたい営業の共通点をご紹介する。
よい保険販売員は、縁故以外から紹介される
まず、家族や友人が保険の販売員だからと入るのは避けたほうがいい。
いわゆる「縁故」による契約は、自分の目がザルになるからだ。
縁故だからさっさと契約してノルマを稼がせてあげたいし、途中で「やっぱりB社がいいので切り替えます」と断りづらい。
そうすると、自分にとって不利だったり、高額すぎる保険を契約しがちである。
だから、自分がサイコパスになれる自信がないなら縁故契約は避けたほうがよいだろう。
縁故以外から紹介される販売員を参考にしよう
では、どういったツテで入る保険がいいのか。
答えは「縁故以外からオススメされる人」だ。
これなら自分が気に入らないからと断っても問題はない。
さらに「類は友を呼ぶ」のとおり、友人と自分の家庭環境が似ているなら、必要な保険商品も似ているはずだ。
似た家庭環境の保険に詳しい保険営業に会えた方が、契約時も参考になる。
ただし、友達紹介によるキャッシュバックキャンペーンもありうるので、念のためその会社を調べてキャッシュバックがないか調べること。
あくまで信頼できるのは「自然な口コミ」である。
よい保険販売員は、リスクについて語ってくれる
がんになると通院期間が長くて家計がひっ迫する方もいらっしゃるので、入院期間にがん特約をつけて無制限に入院保障が出たほうが……
保険販売員A
生命保険だけですと、倒れてからお亡くなりになるまでの期間が不自由もあるかと思いますので、できれば健康でいられなくなった時から生涯年金が出る仕組みのオプションを……
保険販売員B
など、人生で起こるリスクを知らせ、勧誘するのが保険販売の王道だ。
だが、ここには誰しも疑問を抱くだろう。
うち、がん家系じゃないから、このオプションいらないんじゃないかな?
生涯年金が出るオプションに加入するより、iDeCoの方がお得じゃない?
と。
並の保険販売員は、「自社製品の中でよいものを売る」ことに注力している。
だが、私たちの人生には保険以外の選択肢がある。
老後資金ひとつとっても、iDeCo、つみたてNISA、定期預金、共済など……
さまざまな選択肢がある中からなぜ保険を選ぶべきか?
それで得るものと、リスクは何か。
リスクの説明を欠く保険販売員は、生涯のパートナーというには不十分。
契約後もおそらく、契約更新か未払いがあったときだけしか連絡をよこさないだろう。
ある保険会社では、契約後に販売員が商品の種類を切り替え、積立をリセットさせる契約を持ちかけてきた。
口では「より手取りが増える積立のご案内です」と言いながら、実際にはこれまでの積立が引き継がれない契約だった。
つまり、契約変更をするだけで、これまで積んだ老後の予定資金は、なくなってしまう契約だったのだ。
そのリスク説明がなかったことを指摘すると、しどろもどろになって謝罪してきた。
本来ならマニュアルにすらあるであろうリスク説明を欠く販売員など、絶対に信頼してはいけない。
よい保険販売員は客へ「リスクは何?」と質問させない
よい保険販売員は、リスクを先に話してくれる。
だから客から「これって、リスクがあるんじゃないですか」と質問する必要はない。
むしろ客より慎重すぎるほど、リスクを教えてくれる。
たとえば、私が話を聞いたなかでも飛びぬけてすばらしかった保険営業は、こういった話から始めてくれた。
保険契約をされるうえで、一番のリスクって保険会社が倒産しちゃうことなんですよ。
保険会社がお金をお預かりしているんですから、会社そのものが無くなったらパアになるんじゃないかって不安になりますよね。
そこで救済保険会社、承継保険会社による契約の継続という仕組みが日本にはあります。
ようするに、合併吸収したり、他社が契約を引き継いでくれるんです。
ただし、これは100%の受取金額を保証してくれる仕組みではありません。
保険会社は支払いに備えてお金を積み立てているのですが、その90%までしか保証されない……
つまり少し減額されてしまう可能性があります。
さらに、年3%以上の利率を受け取る契約になっている保険は、その利率を超えた分を保証されないおそれがあります。
将来、満期解約でお金を受け取れる保険でも、年3%以上の利率がある商品はリスクもあるとみてください。
あと、保険会社が潰れるときは小さい会社から潰れます。
業界の規模は、意外とバカになりません。
会社の資本金や、バックにどんな会社があるか、その裏にある会社の経営状態はどうかまで見ると、安心してご契約いただけるかと思います。
ここまで言われたら、契約前にリスクを熟知して進めるだろう。
このように、リスクをこれでもか、と説明してくれる保険販売員はいざというときも頼りになる。
不安ばかりをあおって高額契約させる販売員よりも、きちんとリスクを伝えてくれる販売員を選ぼう。
よい保険販売員は、全体像を見る
保険の契約だからといって、保険の話だけをしてくる販売員は「あなたの家計全体」を見ているだろうか。
たとえば同じ年収300万でも、貯金が1,000万ある実家暮らしと、ひとり暮らしの貯金ゼロでは必要な商品が違ってくる。
人によっては「保険どころじゃないので、まずはiDeCoを契約してください」なんてパターンもあるだろう。
よい保険販売員は、あなたの家計全体を見てくれる。
年収、貯金、月の出費……これらを聞いてこない保険販売員は、あまり信頼しなくていい。
客の年収を聞く保険販売員は優秀
最低限、客の年収は保険販売員が知るべき部分である。
年収300万のひとと、1,500万のひとでは必要な保険がガラリと変わる。
年収300万のひとが、食費を削って月2万円も生命保険に払っていたら、おかしいと感じるはずだ。
年収、彼氏・彼女の有無、結婚するかどうか、これから賃貸か持ち家を目指すのか、遺産を受け取るアテはあるか……
これらを知らなければ、適した保険商品など提案できるはずがない。
遺産5億以上の人には生命保険なんてナンセンスで、それより資産の損保のほうが大事だろう。
だが、愛人に資産を受け取らせたいなら遺産相続でもめるよりも生命保険で確実な贈与を……などと、いろいろな人生の岐路に応じた商品がある。
あなたのプライバシーを知らないまま、保険契約を迫る販売員を信頼してはならない。
よい保険販売員は、他社の保険も勉強している
そして、よい保険販売員は他社の保険をよく勉強している。
そして「この条件なら、〇〇生命にもっといい商品があるので、弊社の契約は生命保険だけにして、医療保険は〇〇生命にしたらどうですか」なんて、自社の利益そっちのけで、顧客に最適な提案をしてくれる。
一見、自社の保険を売らないなんてありえないと思うかもしれないが、それでも全部の契約を失うより、部分的に契約してもらえ、なおかつ信頼を得られるから販売員にはメリットしかない。
さらに「あの人は自社製品ばかり売り込まず、いろいろな保険の知識を知っている。信頼できるからあなたも相談してみたら?」と周りに紹介してもらえば一石二鳥である。
どうせ、顧客はさまざまな保険商品を比べるのだ。
そこで「なんだ、ここの方がお得じゃん」と丸ごと契約を切られるくらいなら、自分から提案したほうがいいい。
優秀な保険販売員は、それをよく知っているのである。
ここまで、複数の保険販売員にお会いした経験から、信頼できる販売員の共通点をリストアップした。
これから窓口相談、FPへの保険相談、そして販売員への相談を増やす方もいるだろう。
ぜひ、これらのポイントを踏まえて信頼できる方を探してほしい。
恋愛・就活ライター
トイアンナ
これまでに受けた人生相談は1,000件以上。
その相談実績と、慶應義塾大学卒業後、外資系企業でマーケターとして活躍した経験をもとに2015年に独立。
恋愛・就活ライターに。
現在は複数のメディアに恋愛コラムや就活のハウツーを説く連載を寄稿する他、就活イベントでの講演・ライター育成講座への登壇・テレビ(NHK他)の取材協力など、幅広く活動する。
書籍:『確実内定』(KADOKAWA)『モテたいわけではないのだが』(イースト・プレス)『恋愛障害』(光文社)
過去出演番組:『おしゃべりオジサンとヤバイ女』(テレビ東京系)『最上もがのもがマガ!』『Wの悲喜劇』(AbemaTV)
Twitter:@10anj10