街を歩いていると、「無料で保険の相談ができる窓口」が増えたと感じないだろうか?
2019年10月には、業界最大手『ほけんの窓口』を伊藤忠商事が子会社化。生命保険市場は縮小している。
総合商社は「確実にもうかる」スキームでなければM&Aしない保守的な業界だが、伊藤忠商事は異例の決断をとった。
保険の無料相談が急速に普及したことが、その背景だ。
窓口相談のみならず、FP(ファイナンシャルプランナー)による保険相談も無料で受け付けるサービスが激増。
FPによる保険相談の大手『保険のビュッフェ』はヤマダ電機と業務提携を発表するなど、華々しいニュースが続く。
だがなぜ、FPなどプロのアドバイスを得られるはずの保険相談まで無料なのか?
そこにはある「カラクリ」があった。
無料保険相談の窓口を設置する、販売側のメリットは?
何か新しいサービスが出てきたら、「それを売るメリットが、売る側にあるか?」を考えるとよい。
明らかに販売側が損をしそうな「おいしい話」は詐欺まがいの投資だったり、商品だったりするからだ。
保険相談の無料窓口には、従来の保健営業員が接客するものと、FPなど資格取得者のアドバイスを得られるものがある。
いずれも保険契約が成立すると、売上の何割かを保険会社から支払われるしくみだ。
かつての保険営業には、売る側のデメリットも多かった
かつての保険営業といえば、特定の会社の社員として保険を売る形式が主だった。
しかし、窓口は10社以上の保険商品を扱うこともザラである。
販売員にとっても、複数の保険会社があれば顧客に合ったものをセレクトできることから、成約率を上げやすい。
また、従来の保険営業はご自宅やカフェへ訪問するなど、移動コストも大きかった。
さらに、外でのアポイントメントが多いと、顧客からのパワハラ・セクハラを防ぎづらかったり、サービス残業を泣く泣く耐えるスタッフもいた。
保険の窓口なら、成約率を上げつつ従業員満足度も上げられる
それが商業施設に相談窓口を設置すれば、しらみつぶしに営業をかけずとも、すでに関心を持っている客が来てくれる。
商業施設は家族連れが多いから、おのずと売りたい層が集まる場所だ。
通りすがりに看板を見て「あれ、そういえば保険に入ってないかも」と思ってもらえれば、気軽に初回アポイントメントが成立する。
しかも営業時間は施設の時間によるから、サービス残業も発生しづらい。
周囲の目があれば、パワハラ・セクハラも防げる。
これらのメリットから、無料相談窓口に転職する元専属の販売員もいるようだ。
このように、無料の保険相談窓口は地代さえ払えれば、メリットの多いシステムなのである。
無料保険相談窓口がもつ3つのワナ
だが、無料保険相談にもワナはある。
今回は代表的な3つのトラップを、ここからお伝えしたい。
保険に入らないほうがいい人も、保険を勧められてしまう
顧客にとって最大のワナは、「保険に入らない」という選択肢をもらえないことだろう。
保険営業は、保険商品を売ってナンボである。
もっと言えば、より高額のリベートをもらえる商品を売ってもうけるしくみだ。
手数料はたいがい、顧客が支払う額の〇%と割合で決まる。
つまり、より高い保険商品を売ることが、販売員のモチベーションなことには変わりない。
保険販売員ならまだ警戒できる。
服屋に来て、服を買わないよう勧める店員はいないからだ。
不安を抱いても高い服を買うときのように、「一度家に帰って、検討します」と冷静になれるだろう。
だが、FP(ファイナンシャルプランナー)の相談窓口だったらどうだろうか。
「ファイナンシャルプランナーさんに相談して、保険が必要か考えてみよう」と思っていたつもりが、気づけば高額な保険契約をしていた……のであれば、本末転倒である。
無料で相談に乗ってくれる専門家は、その後のプランで有料になるか、どこかから手数料を得ている。
まずはそれを、肝に銘じていただきたい。
窓口の販売員が、保険の仕組みを理解していない可能性がある
次に、「窓口の保険営業をかける側が持つ、専門性のワナ」がある。
私たちは、窓口で保険の相談をする際、相手が「保険のプロ」だとみなして相談しがちだ。
だが、冒頭のとおり無料相談窓口は急激に増えている。
どんな業界でも、スタッフが急に増えるときには、質の低下は避けられない。
実際に、このような会話を交わした経験がある。
保険の窓口スタッフ:
〇〇さんには、ドル建ての積立型生命保険をおすすめできればと思っています。
トイアンナ:
そうなんですね。ところで、ドル建てだと不安になるのが元本割れリスクだと思いますが、この商品は1ドル何円で元本割れを起こすのでしょうか?
保険の窓口スタッフ:
えっと……そうですね、元本割れのリスクはあります。
外貨建ての保険商品なら、月額費用もドルで支払うから支払い額が変わる。
さらに、受取時に元本割れ(払った金額以下のお金しか受け取れないリスク)もある。
だが、リスクは「どれくらいのリスクか」で話が大きく異なる。
1ドル80円になる可能性は長期スパンならありそうだが、1ドル40円まで元本割れしない試算なら、世界大戦でも起きない限り耐えられそうだ。(たぶん1ドル40円まで耐えうる保険商品はこの世にないとは思うが……)
まだこの事例はよいほうで、ひどいケースだと「為替が何かを知らないスタッフからドル建ての保険商品を勧められた」なんて事例もある。
ここまでくると、金融商品を扱わないでほしいレベルだ。
1つの商品に対する知識が浅くなる
たとえばあなたが、日本生命の保険だけを売っていたとしよう。
10年も働けば、相当な知識が手に入るはずだ。
商品ごとの違いだけでなく、どういう顧客がどんな不安を抱くかや、「会社としてはお売りしたいのですが、お客様のことを考えるとこのオプションはなくてもいいと思います」と、顧客目線で思い切った提案をすることも可能だろう。
だが、10社以上のポートフォリオを持てば、それぞれの商品知識が浅くなるのは仕方がない。
保険商品は会社ごとに大きな差がつきにくい商品ではあるものの、それでも「このオプションを外す裏ワザがある」「〇年で解約すると実はお客様に戻ってくる額が一番大きい」など、細かな専門性が失われる。
結局、顧客から見れば「いろいろな保険を教えてもらったが、自分にピッタリ合うプランはよくわからないままだった」と感じてしまう方も少なくない。
専門性と幅広さは、紙一重である。
むろん、トップセールスなら全社を比較し、適切なアドバイスができるかもしれない。
だが、そういう社員はいずれ外資の高給職にヘッドハントされる。
多種多様な商品知識を持つ人間は、窓口に長く残る理由はないのだ。
保険商品を検討するなら「セカンドオピニオン」を得よう
これらのワナを超える最適な方法は、自分が販売員より専門知識を身に着けることだ……
が、それでは相談の意味がない。
せめて一般人にできる策は、「信頼できるセカンドオピニオン」を得ることだろう。
以前、保険会社に勤める友人からもらった信頼できる人の条件は、以下の通りだ。
信頼できるセカンドオピニオンの条件
- 手数料をどの保険会社からももらっていない
- 有料で相談に乗っている
- 保険以外のライフプラン全体から貯蓄・投資プランを立ててくれる
- 保険がいらない可能性に言及してくれる
これらの条件を満たす会社を、まずは探してみてほしい。
たとえば、私は独立型のFP(ファイナンシャルプランナー)に相談した。
相談料は安くないが、「最後に〇〇〇%が返ってくると言っているこの保険商品、年率だと3%だから結構コンサバめですよ」「年商〇円を超えたら法人で契約したほうがお得ですよ」などと、詳細にわたるアドバイスで増えた所得は相談料をはるかに超える。
なんなら、セカンドオピニオンに限定せず「サード(3番目の)オピニオン」「フォース(4番目の)オピニオン」と複数の相談相手を持つのもいい。
それぞれにスタンスがあれば、「Aさんは生命保険に賛成で、Bさんが反対なのはなぜだろう」と公平な目で比較できるからだ。
また、複数に相談すれば失敗談も教えてもらえることから、反面教師と教師の両方を得られる。
保険に正解はない。
だが、生涯払う額はとてつもない額になる。
月5,000円も、40年払えば240万円だ。
月〇〇円の額に騙されず、生涯の投資額を考えて慎重に決断してほしい。

恋愛・就活ライター
トイアンナ
これまでに受けた人生相談は1,000件以上。
その相談実績と、慶應義塾大学卒業後、外資系企業でマーケターとして活躍した経験をもとに2015年に独立。
恋愛・就活ライターに。
現在は複数のメディアに恋愛コラムや就活のハウツーを説く連載を寄稿する他、就活イベントでの講演・ライター育成講座への登壇・テレビ(NHK他)の取材協力など、幅広く活動する。
書籍:『確実内定』(KADOKAWA)『モテたいわけではないのだが』(イースト・プレス)『恋愛障害』(光文社)
過去出演番組:『おしゃべりオジサンとヤバイ女』(テレビ東京系)『最上もがのもがマガ!』『Wの悲喜劇』(AbemaTV)
Twitter:@10anj10




