共済年金は、ご自分の老後の生活資金を確保する共済商品であり、公的年金だけに頼ることが懸念される中、共済年金の活用は有効な手段と言えます。
共済団体で扱われている年金商品は、こくみん共済「ねんきん共済」、JA共済「予定利率変動型年金共済 ライフロード」があります。
いずれも個性的な年金で、皆さんの老後の支えとなることが期待できる商品と言えるでしょう。
そこで今回は、共済年金の特徴の解説と商品の紹介をして、生命保険会社から販売されている個人年金保険とも比較をしてみますので、公的年金だけではなく民間の年金(保険)を備える必要性についても併せて考えてみましょう。
- 共済団体の販売する年金商品を紹介
- 一般的な個人年金保険との違い
- 共済団体の年金商品の注意点
- 保険の新規加入や見直しを検討するなら、相談員の約97%が国家資格であるFPの資格を所持している「ほけんのぜんぶ」で無料で相談することをおすすめします。
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目次
共済の年金保険はどんな商品?
保険のドリル読者
その一方で、共済でも個人年金のような商品も販売されているのでしょうか?
松葉 直隆
老後の生活を支える商品
共済年金は共済団体の販売する年金商品で、いわゆる【私的年金】の一つと言えます。
年金の受け取りを開始するまでコツコツと掛金を積み立て、ご自分がシニアになった時、積み立てたお金を分割して受け取っていきます。
「公的年金+α」で豊かな老後
現在、皆さんは概ね会社員等の方々なら【厚生年金】、それ以外の方々は【国民年金】に加入していることでしょう。
この公的年金に共済団体の販売する共済年金を上乗せすれば、更にゆとりある老後が期待できます。
公的年金だけをあてにしても、老後の生活が十分に賄えないことはよく指摘されています。(詳細は第6章で解説)
老後の金銭的な窮乏を、ご自分が働いている段階から想定し、自主的に私的年金を運用していくことでそのリスクを軽減することが可能です。
共済年金と言えば公務員の年金?
共済年金といえば、以前の国家公務員・地方公務員・私立学校教職員の各共済組合が給付する年金を思う浮かべる人も多いことでしょう。
公務員の共済年金は、厚生年金の老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金に準じて給付される公的年金でした。
しかし、厚生年金とほぼ同じ保険料でも、給付は【職域加算】といって報酬比例部分の給付が2割増しとなる仕組みとなっていました。
この点が官民格差として問題視され、公務員と会社員等の年金制度の公平化が図られました。
そのため、公務員の共済年金は平成27年(2015)10月厚生年金に統合されています。
本記事では、個人向けに共済が販売する年金商品を『共済年金』と称します。
共済団体の共済年金はイレギュラー?
共済団体は非営利団体であり、加入した組合員の福利を増進するため、次のような共済商品を販売しています。
- 人の保障:医療保障・死亡保障、こども保障、個人年金等
- 車の保障:自動車共済、交通災害共済、自賠責共済
- 家の保障:火災共済、自然災害共済
特に共済団体の販売する【人の保障】に関する商品は、貯蓄目的と異なる商品が多く、いわゆる【掛け捨て型】と呼ばれる保障がほとんどです。
共済団体の販売する共済年金は、この【人の保障】に関する商品となります。
しかし、4大共済(都道府県民共済・こくみん共済・JA共済・CO-OP共済)の中で、年金商品を販売している団体は【こくみん共済】・【JA共済】のみとなります。
こくみん共済とJA共済の年金商品を比較!
こちらでは、【こくみん共済】と【JA共済】から販売されている年金商品の特徴を比較してみます。
比較 | 「ねんきん共済」 | 「ライフロード」 |
共済団体 | こくみん共済(全労済) | JA |
加入年齢 | 15歳~65歳(タイプ別に異なる) | 18歳~85歳 |
年金種類 | 確定年金・終身年金 | 確定年金・終身年金 |
特徴 | 加入者が万一の時の年金が充実 | 予定利率変動型年金 |
加入年齢の範囲は、JA共済の販売する「ライフロード」が18歳~85歳と幅広くなっています。
一方、こくみん共済の「ねんきん共済」は、加入者のもしもの時に受取人(遺族)の受け取れる年金が充実しています。
次章以降では、こくみん共済「ねんきん共済」と、JA共済「予定利率変動型年金共済 ライフロード」の特徴や年金の内容と注目点について解説します。
こくみん共済「ねんきん共済」
保険のドリル読者
そこで、「ねんきん共済」はどのような保障内容となっているのか知りたいです。
松葉 直隆
現在は販売停止中
ねんきん共済は、年金の種類が【確定年金(定額型・逓増型)】・【終身年金(基本型)】を選べる年金商品です。
また、他の共済商品とセットで申し込む【セット専用契約】も用意されています。
加入年齢は15歳~65歳までの範囲となりますが、選んだ年金の種類によって契約可能年齢の範囲は違ってきます。
また、加入者に掛金払込期間中、もしもの事態(死亡または重度障害状態)となった時も、【家族年金】【重度障害年金】【遺族確定年金】いずれかの年金保障が受け取れます。
ただし、「ねんきん共済」は現在、新規加入および追加加入受付が停止されています。
もちろん既に加入している方々は保障が終了になることはありません。
現在加入中の方々は加入時の契約の通り、掛金を払い込み、ご自分が一定の年齢になったら、年金受取が開始されます。
また、「ねんきん共済」は新規・追加加入が停止されているだけですので、国内の経済状態等が好転したら販売を再開することも十分考えられます。
「ねんきん共済」の仕組みを解説!
「ねんきん共済」で利用できる契約年金は【確定年金】【終身年金】に分かれます。
確定年金
年金受け取り期間は5年・10年・15年(セット専用契約:10年・15年)で設定でき、契約年金額は24万円(2口)以上からとなっています。
掛金の払込方法は、分割払い(月払・半年払・年払のいずれか)で行います。
なお、掛金払込期間は最低5年間は必要となります。
確定年金の契約条件で加入年齢・年金開始年齢の設定が異なります。
確定年金 | 単独契約 | セット専用契約 |
加入年齢 |
・受取期間5年:40歳~60歳 ・受取期間10年・15年:15歳~60歳 |
15歳~55歳 |
年金開始年齢 | 55歳~65歳 | 60歳~65歳 |
確定年金の給付方法は次の2種類です。
- 定額型:受取開始から終了まで、毎年同じ年金額が受け取れます。受取当初からしっかり年金を受け取りたい方々向けの給付方法です。
- 逓増型:受取開始時は年金額が少なめです。しかし、2年目以降は毎年、初年度年金額の5%ずつ増額していきます。受取開始時は専ら貯金等を活用し、貯蓄の減少に合わせ年金額は増やしていきたい方々向けの給付方法です。
なお、確定年金はセット専用契約を除いて【家重型】という保障となっています。
こちらについては次項『ねんきん共済の注目点』で解説します。
終身年金
年金受け取り期間は終身で設定され、契約年金額は24万円(2口)以上からとなっています。
なお、終身年金はセット専用契約ができません。
掛金の払込方法は【一時払】のみとなります。
この一時払とは掛金全額を一気に共済側へ支払う方法のことです。
そのため、数百万円以上に及ぶ多額のお金が動くこととなります。
加入前、ご自分の余裕資金を十分に把握して、家計へ過重な負担とならないかよく検討しましょう。
加入年齢は50歳~65歳まで、年金開始年齢は55歳~65歳までとなっています。
据置期間は0年~5年の範囲で選択可能です。
「ねんきん共済」の注目点!
確定年金はセット専用契約を除いて【家重型】という保障が設定されています。
この家重型は、掛金払込期間中、加入者にもしもの事態が起きたときも年金を受け取れる頼もしい仕組みとなっています。
家重型は次の【家族年金】【重度障害年金】【遺族確定年金】に分かれます。
家族年金
年金開始日の前日までに加入者が死亡した場合、契約年金の2倍の金額を10年間、遺族へ支払い契約が終了する年金です。
具体例をあげて受取金額を見てみましょう。
(例)満35歳で加入
- 確定年金:15年受取期間(定額型)
- 年金受取開始:満60歳
- 契約年金額:24万円(2口)
→24万円×2倍×10年=総額480万円
総額480万円が遺族に支払われます。
重度障害年金
年金開始日の前日までに、加入者が全労済の定める重度障害状態となった場合、受け取れる年金です。
この年金は、契約年金と同額分が年金開始日の前日または死亡日もしくは重度障害状態で亡くなった時まで受け取れます。
また、以後の掛金の払込は免除される上、加入者が年金開始日に生存していれば、契約年金が当初の契約通りに共済から支払われます。
前述した契約条件をもとに、具体的な障害事例をあげ重度障害年金の受取金額について見てみましょう。
(障害事例)満45歳で不慮の事故で重度障害状態なった場合
年金開始日まで重度障害状態が継続すると
①満60歳まで
重度障害年金額24万円×15年=重度障害年金360万円
②満60歳の契約年金受取開始から15年間
確定年金額24万円×15年=確定年金額360万円
①+②で
360万円+360万円=総額720万円
総額720万円が加入者本人に支払われます。
遺族確定年金
年金受取期間中に加入者が死亡した場合、残りの期間分の金額を遺族へ支払う年金です。
JA共済「予定利率変動型年金共済 ライフロード」
保険のドリル読者
一方、ライフロードは【予定利率変動型年金】という何やら聞き慣れないタイプの商品のようです。
松葉 直隆
予定利率変動型年金とは?
JA共済の「ライフロード」は、【予定利率変動型】の年金として販売されている商品です。
加入当初5年の予定利率は0.5%、6年目以降の最低保証予定利率は0.75%と設定されています。
この予定利率とは、積み立てる必要のある責任準備金(受け取る保険金、年金等)の額を計算する際の、共済の想定する一般勘定の運用利回りを指します。
予定利率が高いほど保険料は安くなる(受け取る年金額がより多くなる。)ことで、加入者側にメリットがあります。
【予定利率変動型】とは、市場の金利動向等に応じ、この予定利率が見直されるタイプの商品のことです。
「ライフロード」では、適用される予定利率に最低保証が設定されており、実際の予定利率が最低保証より高くなった場合、それに応じて年金額が増加する仕組みとなっています。
とはいえ、予定利率がどのくらい増加するかは、市場の金利動向次第です。
ご自分が望むような利率に達するかどうか、不透明なことを納得した上で加入を検討しましょう。
「ライフロード」の仕組み
こちらでは、用意されている年金種類、加入年齢の範囲、掛金払込方法について説明します。
年金種類
「ライフロード」には【定期年金タイプ】・【終身年金タイプ】があります。
- 定期年金タイプ:受取期間5年・10年・15年いずれかを選択
- 終身年金タイプ:保証期間15年(受取開始年齢50歳・55歳・60歳・65歳)、10年(受取開始年齢70歳・75歳)、5年(受取開始年齢80歳・85歳・90歳)
加入年齢
加入可能年齢は85歳までですが、払込終了年齢・年金受取開始年齢によって加入年齢の範囲は異なります。
加入年齢 | 共済掛金払込終了年齢 | 年金受取開始年齢 |
18~45歳 | 50歳 | 50歳~90歳 |
18~50歳 | 55歳 | 55歳~90歳 |
18~55歳 | 60歳 | 60歳~90歳 |
18~60歳 | 65歳 | 65歳~90歳 |
18~65歳 | 70歳 | 70歳~90歳 |
18~70歳 | 75歳 | 75歳~90歳 |
18~75歳 | 80歳 | 80歳~90歳 |
18~80歳 | 85歳 | 85歳~90歳 |
18~85歳 | 90歳 | 90歳 |
掛金払込方法
払込回数は一時払いも設定可能で、最も掛金総額は抑えられますが、1回の支払額は多額に上ります。
ご自分の貯蓄の状況を十分にチェックしてから、一時払で一気に払い込むかどうかを決めましょう。
- 共済掛金払込回数:月払・年払・一時払
- 共済掛金払込経路:口座振替・クレジットカード払
- 年金受取方法:年金形式または一括受取も可(一括受取の場合、受取年金総額が共済掛金総額を下回るケースに注意)。
「ライフロード」の注目点!
こちらでは「ライフロード」の【定期年金タイプ】【終身年金タイプ】で、年金を設定した場合の年金受取総額・返戻率等について、事例をあげシミュレーションしてみましょう。
定期年金タイプ
受取期間10年の定期年金で設定した場合は次のようになります。
(例)男性が25歳の時に加入
- 定期年金タイプ:10年型
- 共済掛金払込終了年齢:60歳
- 年金受取開始年齢:60歳
- 共済月掛金:1万円
- 払込共済掛金累計額:420万円
①加入当初5年の予定利率0.5%、6年目以降は最低保証予定利率が0.75%のままで推移した場合
項目 | 金額・返戻率 |
年金受取総額 | 4,562,870円 |
返戻率 | 約108.6% |
②加入当初5年の予定利率0.5%、6年目以降は予定利率が1.47%(0.72%↑)で推移した場合
項目 | 金額・返戻率 |
年金受取総額 | 5,287,981円 |
返戻率 | 約125.9% |
終身年金タイプ
終身年金の場合は次のような事例でシミュレーションしてみましょう。
(例)男性が35歳の時に加入
- 共済掛金払込終了年齢:65歳
- 年金受取開始年齢:65歳
- 共済掛金:30万円(年払)
- 払込共済掛金累計額:900万円
- 年利:2.05%
項目 | 金額・返戻率 |
年金受取総額 | 12,519,000円 |
返戻率 | 約139.1% |
ただし、予定利率が伸び悩むと、年金額(返戻率)は期待したほど受け取れない場合もあります。
共済年金と個人年金保険の違い
保険のドリル読者 共済年金と個人年金には何か違いがあるのでしょうか?
松葉 直隆
どちらも老後の備えとして役立つ!?
共済団体の販売する年金商品も、生命保険会社が販売する個人年金保険も、老後の備えとして役立つ商品であることに変わりはありません。
双方とも一定期間にわたりお金を払い込み、加入時に設定した年齢となったら年金の受取が開始されます。
原則として65歳からと年金受給開始が決まっている公的年金と違い、共済または保険会社が設定した年齢の範囲内で、自由に年金開始年齢が決められます。
そのため、共済年金・個人年金保険で、年金開始年齢を55歳・60歳からというように早めの設定をして置けば、ご自分が早期退職した場合も退職金等を合わせて、退職後の生活費の支えの一つとなります。
また、共済年金・個人年金保険共に、年金形式でお金を受け取らず、一括で受け取ることも年金の種類によっては可能です。
年金の種類とは?
共済や保険会社が扱う年金の種類は豊富で、主に次の5つがあります。
ただし、どんな年金商品も、この種類全てが用意されているとは限りません。
保証期間付終身年金
公的年金と同じく、被保険者が生存する限り年金を受け取れます。
また、被保険者の生死に関係なく受取人(遺族)へ年金の下りる【保証期間】も設定されています。
確定年金
加入者(契約者)の生死に関係なく設定期間に年金が受け取れます。
また、年金受取期間中に本人が死亡したら、残りの期間に対応する年金分は問題なく受取人(遺族)が受け取れます。
保証期間付夫婦年金
加入者(契約者)である夫婦のどちらか生存している場合、年金を継続して受け取れます。
たとえご夫婦とも受取期間中に死亡しても、保証期間分の残額があれば相続人へ支払われます。
定額保証付終身年金
加入者(契約者)の生存する限り年金が受け取れます。
仮に加入者(契約者)が死亡しても、本人の指定した保証金額の残額分が受取人(遺族)へ支払われます。
保証金額付終身年金
加入者(契約者)の生存する限り年金が受け取れます。
年金支払開始以後に加入者(契約者)が死亡しても、本人の指定した保証金額の残額分が受取人(遺族)へ支払われます。
共済年金と年金保険を比較
こちらでは、共済年金と年金保険の特徴を比較してみましょう。
比較 | 共済年金 | 個人年金保険 |
販売・運用 | 共済団体 | 生命保険会社 |
保険種類 | 主に確定・終身年金 | 主に確定・終身年金 |
特徴 |
・共済団体が堅実に運用 ・円建て商品 |
・円建てや外貨建て、変額商品と多彩 ・リスクが非常に高い商品も |
このように、共済年金と個人年金保険は基本的な仕組みが同じです。
しかし、生命保険会社は商品のバリエーションが豊富で、より利用者のニーズに応じた商品を選べる点が魅力です。
共済年金と個人年金保険の活用法
保険のドリル読者 それぞれの活用法やリスクについて教えて下さい。 松葉 直隆
共済年金は堅実?
共済団体の販売する年金は、円建てで運用される商品となっています。
また、加入時に将来の受取年金額や返戻率の決まっており、加入者側にとっては安心です。
前述したJA共済「予定利率変動型年金共済 ライフロード」は、予定利率変動型の仕組みですが、最低保証が設定されているので、少なくとも最低保証以上の年金額が受け取れます。
このような安心できる商品の仕組みの他、共済団体では日本国内の国債等で堅実に運用することを徹底していると言われています。
そのため、海外等の投資先へ積極に投資し、大損失を出すような運用方法はとりません。
ご自分の年金を堅実に運用したいならば、共済年金を選ぶべきでしょう。
個人年金保険の場合はハイリスクな商品も?
生命保険会社の販売する個人年金保険は、前述したように豊富なバリエーションを取りそろえ、選択肢の幅が広くなっています。
もちろん堅実に運用できる商品もある
当然、共済保険と同様に円建てで運用される商品が数多く販売されています。
とはいえ、返戻率は約103%~108%程度と、共済年金と同じ位かやや低めの割合となっています。
堅実に運用できるのは良いですが、より返戻率をあげるためには、払込を年払や一時払にして支払う回数を少なくすること、払込期間をなるべく短期で払い終える等の工夫が必要です。
ハイリスク・ハイリターンな商品に要注意
一方で、運用成績によっては返戻率が200%を超える商品も存在します。
それが外貨で運用する【外貨建て個人年金】、積極な投資で運用する【変額個人年金】です。
外貨建て個人年金ならば契約通貨発行国の景気次第、変額個人年金ならば投資運用先の国・企業の株価等で大きな利益が期待できます。
しかし、外貨建て商品も変額商品も、【元本保証(いわゆる払い込んだ保険料全額分の保証)】のない場合が多く、運用の失敗で大損失を出す場合も考えられます。
当然、保険の運用は最終的に契約した本人の自己責任となります。払い込んだ保険料より少ない年金額しか受け取れなくても、保険会社側は弁償してくれませんので注意が必要です。
有期年金・終身年金の併用もあり?
終身年金は長生きすればするほど、生涯で多くの年金額が受け取れます。
また、受取開始を据え置けば、その分受け取る年金額はお得になります。
しかし、終身年金を遅めに受取開始する場合、ご自分の退職後の前半は、預金と公的年金で賄う生活となることでしょう。
事業所から受け取れる退職金が多額になるなら問題ありません。
しかし、昨今の日本経済の低迷で事業所から十分な退職金が受け取れないこともあります。
そんな時は終身年金の他、有期年金(確定年金等)に合わせて加入し、終身年金を開始するまでの“つなぎ”とするのも良い方法です。
有期年金(確定年金等)として、5年・10年・15年と受取期間の選べる商品がほとんどです。
そのため一定期間、預金や公的年金収入に頼り切る生活を回避する備えとして加入しておけば安心です。
終身年金の他に回すお金の余裕があるなら、有期年金との併用も検討してみましょう。
共済年金(保険)の必要性は?
保険のドリル読者
しかし、このような私的年金を各自が備えなければいけないほど、公的年金は頼りないのでしょうか?
公的年金を受け取る方々の現状がどうなっているのか気になります。
松葉 直隆
国民年金・厚生年金はあるけれど
皆さんは現在、公的年金(国民年金・厚生年金)に加入し、保険料を納付していることでしょう。
公的年金給付額の目安
国民年金・厚生年金とも終身年金ですので、被保険者の生存する限り年金が受け取れます。
自営業者等の国民年金に加入している方々は、原則65歳に達すれば【老齢基礎年金】が給付されます。
20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた場合、年間781,700円(令和2年4月分~)が受け取れます。
一方、会社員等の厚生年金は毎月の給与や勤続年数等で、かなり受取金額に違いが出ます。
概ね【老齢厚生年金+老齢基礎年金】で、年間約174万円が受け取れると言われています。
高齢化リスクに対応できるか?
一方、日本人の平均寿命は女性87.32歳、男性が81.25歳で、いずれも過去最高となっています(出典:厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」参照)。
健康でより長生きできることは素晴らしいことです。
しかし、一方で長寿化した分、高齢となったとき貯蓄が次第に減少し、金銭的に窮乏してしまうリスクも考えなければいけません。
そんな時に『年間78万円の老齢基礎年金、年間約174万円の老齢厚生年金+老齢基礎年金で、はたして十分な生活が送れるのか?』よく検討する必要はあります。
無職高齢世帯は厳しい
仮に年金がメインの生活を行った場合、実収入・支出額はどうなっているのでしょうか?
総務省によれば、夫65歳以上・妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯の場合、年金等の毎月の実収入平均は222,834円、一方で毎月の総消費支出は平均264,707円と報告されています。
つまり、年金収入がメインだと毎月の赤字額は41,872円、年間では502,464円の赤字となってしまいます。
60歳以上の高齢単身無職世帯は、年金等の毎月の実収入平均123,325円、一方で毎月の総消費支出は平均161,995円となっています。
こちらは、毎月の赤字額は38,670円、年間では464,040円の赤字となってしまいます。
この報告からも高齢単身無職世帯では赤字となる可能性が高く、公的年金の他、何らかの備えが必要となるでしょう(出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)平均結果の概要」)参照)。
今から老後を考える!
現在、わが国では元気な高齢者がたくさんいて、公的年金ばかりに頼らず、生活費等の不足分はパートで賄うことを検討している方々も多いはずです。
しかし、後期高齢者(75歳)以降になれば、生活費等の不足分をパートで賄うことは、体力的にも健康面でもかなり難しくなります。
この場合、公的年金だけでは生活資金不足となるのが明らかで、貯金等も無くなると、いよいよ生活は厳しくなります。
同居家族がいるなら子供から援助してもらえたり、親戚から援助してもらえたりすることがあるかもしれません。
しかし、誰しもが同居家族や親戚に頼れるとは限りません。
公的年金収入だけでは不足が明白な以上、共済年金・個人年金保険で事前の備えを行うことが必要となるでしょう。
まとめ
最後に、年金商品で資産運用を行う場合の注意点について解説します。
現在、世界全体が「新型コロナ・ウィルス」の脅威にさらされています
このウィルスパニックは、人の身体に重大な事態を伴うだけでなく、世界経済をも危機的な状況に陥れています。
経済が好調だったアメリカは甚大な死者数のみならず、経済の停滞も顕著となっています。
前述した外貨建て個人年金は全て米ドルが契約通貨として、設定または選択できる商品ばかりです。
また、積極的な投資で受け取る年金額を増やす変額個人年金は、海外市場を主な投資先とします。
このような世界中が非常事態となる中、これらの商品の高い返戻率に目を奪われ、そのリスクを軽視し、安易な申込を行ことは避けましょう。
その点、共済年金は堅実な運用に徹しています。その後の不安定な社会の中、どちらが安全・安心に老後の生活の支えとなるか、よく検討することが大切です。